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更年期症状の予防・緩和に効果があると言われる女性のホルモン補充療法について、わかりやすく解説します。
ホルモン補充療法(HRT)とは
ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)とは、女性のホルモンを補充することで、閉経前~閉経後の症状の予防、緩和、改善をおこなう治療です。
日本ではあまり一般的ではありませんが、欧米では30年ほど前からおこなわれています。 (Regidor 2014)
当院でのHRTは、主に3種類の方法でおこなっています。
①エストロゲン(卵胞ホルモン補充)
②プロゲステロン(黄体ホルモン)補充
③低用量テストステロン(男性ホルモン)補充
ホルモン分泌と補充療法の仕組み
①エストロゲン(卵胞ホルモン補充)
エストロゲン(卵胞ホルモン)は、女性らしい身体(乳房の発育、丸みのある身体)をつくり、子宮内膜を厚くして妊娠に備える働きの他、コラーゲンの生成を促して肌ツヤを出したり、健康的な血管、血液、骨、脳を保ったりする働きがあります。
このエストロゲンは、30代頃から分泌量が徐々に減っていき、閉経の前後5年間、急激に低下するため、下記のような症状が現れます。
・ほてり、のぼせ、発汗
・手足の冷え
・頭痛、めまい、動悸
・耳鳴り
・尿漏れ、頻尿
・物忘れが多い
・判断力、集中力の低下
クリーム、パッチ、経口薬でエストロゲンを補充することで上記の症状を予防・緩和することができるほか、下記のリスクも抑えることができます。
・心血管疾患
・脂質代謝以上(コレステロール、中性脂肪の増加)
・排尿障害(頻尿、膀胱炎など)
・骨粗鬆症
(Life Extension Magazine 2008)
エストロゲンの補充を取り入れることで、更年期症状の発生を少しでも遅らせ、また症状を緩和することが可能です。
それによって、お仕事や家庭生活、趣味などあらゆる場面で体調不良に悩まされずいつまでも活躍できることが期待できます。
②プロゲステロン(黄体ホルモン)補充
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、主に基礎体温を上げて妊娠しやすい体にする作用と乳腺を発達させる作用があります。 このプロゲステロンはもう一つの女性ホルモンであるエストロゲンよりも早く、閉経前から減少を始めるため、一時的にエストロゲンが過多になってしまい、下記のような症状が現れます。(Richeux 2022)
・月経不順
・胸の痛み、違和感
・月経量の増加
・体重増加
・気分障害(落ち込み、イライラ)
・乳がん、子宮がん、子宮筋腫のリスク
さらに、閉経後にはホルモンが急激に減少し、下記の症状が現れます。
・ほてり
・寝汗
・無力感
・膣の乾き
・性交痛
クリーム、パッチ、経口薬でプロゲステロンを補充して上記の症状やリスクを予防・緩和することによって、全体的な女性のQOLが向上すると期待できます。(Prior, et al. 2023)
③低用量テストステロン(男性ホルモン)補充
テストステロンは一般的に男性の分泌が多いため「男性ホルモン」として知られています。しかし、女性の体内でもテストステロンは分泌されており(男性の1/10~1/20程度)、骨や筋肉の形成、集中力・記憶力の向上、体力向上といった役割を担っています。 (British Menopausal Society 2022)
女性のテストステロン分泌は20代から徐々に減少し、下記のような症状が現れます。
・性欲減退
・やる気・集中力の減少
・体力・筋力低下
・骨密度の低下
上記の症状を緩和し健康的な生活を維持するためには、テストステロンも女性ホルモンと同様に重要です。 (Scott, et al. 2020)
ホルモン補充療法(HRT)が適している人
閉経前の不調やホルモンバランスの崩れは、早ければ30代後半から始まると言われています。
また、閉経後はホルモンの分泌量が減少していく一方であるため、更年期症状や性欲減退、やる気・体力の減少に悩む方は、症状に合わせてHRTを始めることをおすすめいたします。
使用方法について
当院で扱っているHRT医薬品のうち、エストロゲンは毎日飲む経口薬タイプ、プロゲステロン・テストステロンはクリームタイプであるため、付属のアプリケーターで簡単に計量し、気軽に始められるのがポイントです。
クリームタイプの医薬品は以下のようにご使用いただけます。
🌟プロフェム10%(プロゲステロン)
・毎日ほぼ同じ時間に使用する。
・プロフェムクリームは常に清潔で乾いた皮膚(二の腕の内側または太ももの上部)に塗布する。
・1日あたり0.3mlほど
<閉経前の不調に>
各月経周期の12~26日目に1日1回、または分割して計量アプリケーターで塗布する。26日目より前に月経が始まった場合は、使用を中止し、出血のあった最初の日を新しい月経周期の1日目とみなす。
<更年期症状の緩和に>
1日1回、または分割して、計量アプリケーターで塗布する。1ヵ月に25日間、または3週間使用し、1週間休薬する。
🌟アンドロフェム1%(テストステロン)
・1日あたり0.5mLほど
・1日1回、毎日ほぼ同じ時間に使用する。
・大腿上部や臀部、下腹部など衣類で覆われる部分に塗布する。
・クリームを塗った後は、石鹸と水で手をよく洗う。
HRT医薬品は、効果を実感するまでに約3ヶ月程かかるとされています。すぐには効果を感じられなくても、地道に使い続けていただくことが重要です。
注意事項
各HRT医薬品の副作用として、下記が生じる可能性があります。
①エストリール錠1mg(エストロゲン)
・血栓症(重大な副作用、直ちに服用を中止する)
・過敏症:発疹、そう痒感等
・子宮:不正出血、帯下増加
・乳房:乳房痛、乳房緊満感等
・消化器:悪心、食欲不振等
・肝臓:AST・ALT の上昇等 ・嘔吐
・その他:めまい、脱力感、全身熱感、体重増加
上記症状が現れたら服用を中止し、すぐに当院もしくはかかりつけ医に相談していただくようお願いいたします。
②プロフェム10%(プロゲステロン)
乳房の圧痛や腫れ、体液貯留、わずかな膣出血、めまい、吐き気、疲労感、軽い頭痛
※通常は用量を調節することで消失します
※人間の卵巣から分泌されるホルモンと同じものが含まれているため、副作用は通常ほとんどありません。
③アンドロフェム1%(テストステロン)
<副作用>
ニキビと脂性肌、体毛の増加(特に顔)、頭髪の喪失(男性型脱毛症)または薄毛、頭痛、腹部膨満感、便秘
<重大な副作用>(これらの副作用に気づいたら、すぐに医師に連絡するか、最寄りの病院を受診してください。)
吐き気、嘔吐、黄疸とも呼ばれる皮膚や目の黄変、足首の腫れ、体重増加、しつこい頭痛、声の深化、乳房組織の変化、膣出血、排卵と月経の停止(閉経前の女)、クリトリス肥大、アレルギー反応として息切れ、喘鳴や呼吸困難、顔、唇、舌などの腫れ、皮膚の発疹、かゆみ、じんましん
当院で処方を受ける方法
当院では、電話によるオンライン診療を通して通院をせず手軽に治療を始めることが可能です。
また、診療予約前に購入したい医薬品を決めなくても、「お薬相談」という形で症状や体調を医師にご相談いただけます。
お客様によって異なる体質・お悩みを確認してから、一人一人に合った治療法を医師からご提案いたします。
最近ほてりやめまいに困っている、やる気がでない、体力が前よりもなくなってきた...と感じる方は、ぜひ当院のホルモン補充療法を受けてみることをおすすめいたします。
参考資料
・A. Scott, L. Newson. “Should we be prescribing testosterone to perimenopausal and menopausal women? A guide to prescribing testosterone for women in primary care”. Br J Gen Pract. 2020 Apr; 70(693): 203–204.
・Body Logic MD. “What’s the Role of Estriol in Women?”. https://www.bodylogicmd.com/hormones-for-women/estriol/.
・British Menopausal Society. “Testosterone Replacement in Menopause”. Information for GP’s and other health professionals. 2022.
・J. C. Prior, A. Cameron, M. Fung, C. L. Hitchcock, P. Janssen, T. Lee & J. Singer. “Oral micronized progesterone for perimenopausal night sweats and hot flushes a Phase III Canada-wide randomized placebo-controlled 4 month trial”. Scientific Reports. Vol. 13. 2023.
・Life Extension Magazine., “Estriol: Its Weakness is Its Strength”. 2008-08, https://www.lifeextension.com/magazine/2008/8/estriol-its-weakness-is-its-strength.
・P. A. Regidor. “Progesterone in Peri- and Postmenopause: A Review”. Geburtshilfe Frauenheilkd. 2014 Nov; 74(11): 995–1002.
・V. Richeux. “Progesterone Recommended for Perimenopause”. Medscape. 2022.